【高コスパ!】Prime カーボンホイールをインプレッション

【2023年1月更新】ホイールの重要性が昔以上に声高に言われるようになって久しい。以前はフレームが絶対的な権力者で、デローザやコルナゴは剛性が高くて、チネリは……といった具合に、ブランドの名前が走行性能を決めているかのようだった。

というのも、走行感がどのように決まるかが、実際にはよく分かっていなかったのだ。手組みホイール時代は部品構成が同じでも、スポークの組み方や張力に差があって、ホイールの性能は均質化されていなかった。製品にばらつきがあるせいか、ホイールの地位はフレームや駆動系部品よりも低かった。

ホイール

それが今や、フレームの次に大事だという人もいれば、いや、ホイールが良ければフレームはサイズだけ合っていればいいという人もいる時代である。どちらが正解かは別として、ホイールの性能が重要なことは間違いない

Primeとは?

Prime

画像出典:Wiggle

Primeとは、イギリスの大手スポーツ系通販サイトWiggleのプライベートブランドだ。ブランドの誕生は2016年。北アイルランドの通販サイトChain Reaction Cyclesのプライベートブランドとして誕生したが、Wiggleに買収されたことにより今の形になった。

現在、Primeのホイールは、WiggleとChain Reaction Cycles両方のサイトから購入することができる。

Primeはカーボンホイールが特に人気で、主に2つに分類される。

  • 上位モデルの “Primavera” (BlackEditonの事実上の後継モデル)

リムハイトは、

・ディスク:32, 44, 56, 85㎜(85㎜はリアのみ)

・リム:28, 50, 60, 85㎜

  • ベーシックモデルの”RR – V3”

リムハイトは、

・リム・ディスク:38, 50㎜

ブレーキの種類別に、ディスクモデルとリムモデルがあるが、在庫状況によっては入手できないモデルもあるので注意しよう。また、Primeホイールは、リム・ハブ・スポークなどのパーツでのバラ売りもされているため、手組みでホイールを組むことも可能だ。

ひと昔では考えられない高コスパ

Prime最大の特徴はコストパフォーマンスの高さだ。

一般的なカーボンホイールは安くても10万円以上だが、Primeは2022年12月現在、上位モデルの “Primavera” は定価115,000円(税別)、下位モデルの“RR – V3”はさらに安い定価72,000円(税別)。頻繁にセールが実施されており、実売価格は定価からさらに10%〜20%引きであることが多い。送料は無料である。

しかも、購入後2年以内に破損した際に40%OFFで新しい商品と交換できる「Prime 損傷交換プログラム」や、365日以内の返品時返金保証もある。

以降は、“Prime – Primavera” についてスペックなども確認しながらコストパフォーマンスを考えてみる。

Prime – Primavera 44 Carbon Disc

ディスクブレーキモデル“Prime – Primavera 44 Carbon Disc” のスペックを見ていこう。こちらはリム高44㎜で、重量だけでなく空力の向上も目指し、オールラウンドに使用されることが想定されたモデルだ。 

Prime – Primavera 44 Carbon Disc

画像出典:Prime Bike Component

  • リム高:44㎜
  • リムの素材:T700UDカーボン
  • リム幅:内側23㎜、外側30㎜
  • 対応タイヤ:チューブレスレディ&クリンチャー
  • ハブ:SR1D CNC加工済み 7075 アロイハブボディ
  • スポーク:DTエアロライト(非駆動側)とDTエアロコンプ(駆動側)
  • 重量:前後セットで1,378g(公称)

ここ数年で急激に普及してきたディスクロードバイクでは、ブレーキ時にカーボンリムの熱による破損を心配する必要がない。そのためディスク用カーボンホイールはリムモデルよりも需要が高く、多くの新興メーカーも参入してきていて競争が激しい。

その中でも、“Prime – Primavera 44” はリム高44㎜・ワイドリムでありながら、1,378gと軽量な部類に入る。スペックを聞いてもピンと来ない人もいるかもしれないが、この数値はライバルメーカーが気の毒になるほど戦略的だ。

このスペックは一昔前なら完組ホイールで30万円以上であり、現在でも多くの有名ブランドのカーボン製チューブレス用ホイール1本分の価格よりも安い。カーボンホイールが手頃になってきたとはいえ、際立つスペックである。

Prime – Primavera 50 Carbon

次に、リムブレーキモデル“Prime – Primavera 50 Carbon”を見ていこう。このホイールは、ディープリムながら1,438gという軽さが特徴。平地から山岳まで、オールラウンドに活躍できそうだ。

Prime – Primavera 50 Carbon

画像出典:Prime Bike Component

  • リム高:50㎜
  • リムの素材:T700UDカーボン
  • リム幅:内側20.3㎜、外側27.5㎜
  • 対応タイヤ:チューブレスレディ&クリンチャー
  • ハブ:SR1 CNC加工済み 7075 アロイハブボディ
  • スポーク:DTエアロライト(非駆動側)とDTエアロコンプ(駆動側)
  • 重量:前後セットで1,438g(公称)

旧型となる“Black-Edition”からリムの内幅が1.3㎜拡張され、内幅20.3㎜となった。また外幅27.5㎜も25Cや28Cタイヤをつけた際に空力的に有利となるような太めの設計である。

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Prime – RR – V3

コスパが高いと言えど、初心者にとっていきなり10万円近い “Primavera” はハードルが高いかもしれない。そのような場合は6万円前後の “RR – V3” を検討してみるのもアリだ。

Prime – RR-38 V3 カーボンクリンチャーホイールセット

Prime – RR-50 V3 カーボンクリンチャーディスクホイールセット

カーボンホイールが人気のPrimeだが、アロイホイールやハンドル、ステム、シートポストなどの部品も販売されている。これらも、コストパフォーマンスが非常に高いのでおすすめだ。

今後タイヤ幅は28mm&チューブレスが主流に

現在、レーシングタイヤの主流は25㎜幅だが、次世代は28㎜まで拡大すると予想されている。“Prime – Primavera 44 Carbon Disc” や “Prime – Primavera Carbon 50” の内幅の拡張はタイヤ幅が28㎜になる次世代を見通した仕様だと言える。

リムの構造もチューブレスタイヤに適合しており、インナーチューブが不要だ。太くなると、当然のようにタイヤの重量は重くなる。これは軽快な走りに背を向けるようだが、転がり抵抗は太いタイヤにしたほうが歪み量が減少し、軽快感が増す

Prime BlackEdition 38 インプレッション

【注】2018年モデル “Prime – BlackEdition 38”(リムブレーキ)のインプレッションです。最新モデル”Primavera” とはスペックが異なります。

Prime BlackEdition 38 インプレッション

今回は “Prime – BlackEdition 38”にチューブレスレディタイヤ “Hutchinson フュージョン 5 11ストーム 25C”を装着し、シーラント剤はフィニッシュラインのものを挿入。バイクは TIME SCYLON AKTIVで走ってみた。空気圧はフロント6.2bar、リア6.5barとした。

スムーズな車輪の回転に驚く

走りカット

走り出して驚くのは、転がり抵抗の小ささだ。タイヤの変形が少ないから……もあるが、なによりホイールの剛性が高く、スムーズに車輪が回っている感じだ。これがヤワなホイールだと様々なフリクションロスが発生して、スムーズさが失われてしまう。

限界領域の話を別にすれば、常用域においてはスポーク張力も十分であり、走行感から推測するに、ハブシャフトやシェルの変形量も小さいことがうかがい知れる。

スポークは中央部分が扁平加工されたエアロタイプで、後輪のギヤ側がDT・エアロコンプ、それ以外はDT・エアロライトを採用している。

リムが重くなっているはずだが、良い加速感

加減速においても、“Prime – BlackEdition 38”は弱点らしい弱点を感じさせない。リムの重量は旧型のCC-38が440g、BlackEditionのリム重量は公開されていないが、リム幅が広くなっていることもあり、軽くなる要素はないのでプラスαは重くなっているはずだ。

リムの重量は大切なファクターではあるが、世間でいうほど絶対的なモノではない。抜群に加速がいい……とは言わないが、価格を考えれば加速も十分だろう。なにより数値以上の快適性が光る。いかにも硬度の高そうなリムはタイヤとのマッチングもよく、路面の振動の収まりがいい。簡単に言えば、乗り心地がいい。太いタイヤで空気圧を落としてフワフワとした快適性が高いのではなく、リムが硬く、タイヤのみが変形し、歪みが素早く収束する。いわゆるスポーツカーのような足回りと一緒だ

ブレーキのタッチも想像以上にいい。雨天時でも制動力が落ちないようにブレーキパッドの当たり面が荒らされており、カーボンリム用ブレーキパッドなら、程よく減速してくれる。欲を言えば、もう少し摩擦抵抗の高いほうが制動距離も短くなるだろうし、制動力の立ち上がりも早くなる。ただ、中級者までのことを考えるなら、いい妥協点だとも言える。

ひとつ気になった点を挙げるなら、クイックレバーを閉めていったときの質感が乏しいぐらいだろうか。

リム

フリーボディはシマノ&スラムに対応する。カンパニョーロ用フリーボディもWiggleから購入できる。

評判に違わぬ実力派モデル

初めてホイールを買い換えようと思っている人にとって、定価11万円というのは悩ましい価格帯だろうが、この性能なら、ちょっと無理をしても買って後悔することはないだろう。Primeのホイールは「コスパがいい」という評判だが、まさにその評判に違わぬ性能は十分にある。

ハブはプライム・R010プロを前後共に採用。フランジはストレートプルタイプで、フロントは20本のラジアル、リアは24本のタンジェント組み。

ハブはPrime・R010プロを前後ともに採用。フランジはストレートプルタイプで、フロントは20本のラジアル、リアは24本のタンジェント組み。

購入後のパーツの交換は基本的に自転車ショップでやってもらうものと考えたほうが良い。ホイールの交換はパーツ交換の中でも比較的簡単なため、自分で済ます人も多いかもしれない。

しかし、パーツ交換は、ちょっとしたミスが思わぬ事故につながる危険をはらんでいるため、やはり、プロにお任せすることをおすすめする。

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WRITTEN BY菊地武洋

自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、独自の視点・語り口でハードウエアの評論を行う。近年はロードバイク以外にも、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛ける。

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